第5回 認知バイアスの罠:アンカリング効果、フレーミング効果、過剰な自信

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ビジネス・マーケティング
私たちを惑わせる見えない心理
行動経済学は、人間の心理的な偏りや誤謬、いわゆる「認知バイアス」が経済的な意思決定に与える影響を明らかにする学問です。前回の記事では、行動経済学の概要や3つの柱について解説しました。今回は、認知バイアスの中でも特に代表的な3つ、「アンカリング効果」、「フレーミング効果」、「過剰な自信」について詳しく掘り下げ、それぞれの具体的な事例と対策を紹介していきます。

1. アンカリング効果:最初の情報に引きずられる心理
あなたは、ある高級ブランドのバッグを2万円で購入したとします。その後、同じブランドのバッグが1万円で売られているのを見た時、どう感じるでしょうか?多くの人は、「2万円で購入したのに1万円で売られているなんて、なんてお得なんだろう!」と感じるはずです。これが、アンカリング効果と呼ばれる心理現象です。
アンカリング効果とは、最初に提示された情報(アンカー)によって、その後の判断が大きく左右されるというものです。例えば、不動産の価格交渉において、売主が最初に提示する価格がアンカーとなり、買主はその価格を基準に交渉を進めてしまう傾向があります。また、オークションでの入札においても、最初に提示された入札額がアンカーとなり、その後の入札額が吊り上げられる可能性があります。

2. フレーミング効果:問題の提示方法による判断の変化
あなたは、ある治療法の成功率が90%であると聞いた時、どう思うでしょうか?一方、同じ治療法の死亡率が10%であると聞いた時、どう思うでしょうか?実は、同じ治療法であっても、提示方法の違いによって、人の判断は大きく変わってしまうのです。これが、フレーミング効果と呼ばれる心理現象です。
フレーミング効果とは、問題の提示方法によって、人の判断や評価が変化してしまうというものです。例えば、ある臓器移植ドナー登録キャンペーンにおいて、「臓器移植によって命を救える確率は20%」と提示した場合と、「臓器移植によって命を救えない確率は80%」と提示した場合では、ドナー登録率に大きな差が出ることがわかっています。

3. 過剰な自信:自分の能力や判断を過大評価する傾向
あなたは、自分の投資判断に自信がありますか?多くの人は、自分の能力や判断を過大評価する傾向があります。これが、過剰な自信と呼ばれる心理現象です。
過剰な自信とは、自分の能力や判断を客観的に評価するよりも高く評価してしまうというものです。例えば、投資において、自分の投資判断が正しいと過信し、リスクを過小評価してしまうことがあります。また、自分の意見や考えに固執し、周囲の意見に耳を傾けないこともあります。

事例
• アンカリング効果
o 不動産の価格交渉:売主が最初に提示する価格がアンカーとなり、買主はその価格を基準に交渉を進めてしまう。
o オークションでの入札:最初に提示された入札額がアンカーとなり、その後の入札額が吊り上げられる。
o セール価格:定価と比較することで、商品が安く感じられる。
• フレーミング効果
o 臓器移植ドナー登録キャンペーン:成功率と死亡率の提示方法によって、ドナー登録率に大きな差が出る。
o 健康食品の広告:リスクを強調するよりも、効果を強調することで、購買意欲を高める。
o ニュース報道:見出しやフレーミングによって、記事の印象が大きく変わる。
• 過剰な自信
o 投資判断:自分の投資判断が正しいと過信し、リスクを過小評価してしまう。
o 営業活動:自分の商品やサービスが優れていると過信し、顧客ニーズを無視してしまう。
o 政治判断:自分の意見や考えに固執し、周囲の意見に耳を傾けない。

対策
1.認知バイアスの存在を認識する
認知バイアスは、誰にでも存在するものであることを認識することが重要です。認知バイアスには様々な種類があり、それぞれ異なる影響を与えます。代表的な認知バイアスとその影響を理解することで、自分の思考や判断が、認知バイアスの影響を受けていないか常に意識することができます。

2.複数の情報源から情報を得る
1つの情報源だけに頼らず、複数の情報源から情報を収集しましょう。異なる視点から問題を考えることで、認知バイアスの影響を軽減することができます。
情報収集を行う際には、以下の点に注意しましょう。
• 情報源の信頼性: 情報源が信頼できるかどうかを確認しましょう。
• 情報の偏り: 情報に偏りがないかどうかを確認しましょう。
• 情報の最新性: 情報が最新のものであるかどうかを確認しましょう。
情報源としては、書籍、ウェブサイト、ニュース記事、専門家の意見などがあります。

3.自分の判断を客観的に評価する
自分の判断を客観的に評価し、必要であれば周囲の意見を聞きましょう。感情に流されず、冷静に判断することが大切です。
自分の判断を客観的に評価するために役立つ方法は、以下の通りです。
o 自分の判断の根拠を明確にする: 自分の判断の根拠を明確にすることで、客観的に評価しやすくなります。
o 他の人の意見を聞く: 他の人の意見を聞くことで、自分の判断が偏っていないかどうかを確認することができます。
o 時間をかけて考える: 時間をかけて考えることで、冷静な判断を下すことができます。
認知バイアス対策は、日々の習慣化が重要です。 上記の対策を意識的に行うことで、認知バイアスの影響を軽減し、より良い選択をすることができるでしょう。

まとめ
アンカリング効果、フレーミング効果、過剰な自信は、私たちの意思決定を大きく左右する認知バイアスです。 これらの認知バイアスの影響を認識し、対策を講じることで、より合理的な判断を下すことが可能になります。

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