第6回 プロスペクト理論:損失回避と期待効用関数の謎

記事
ビジネス・マーケティング
あなたは、100円を確実に手に入れるよりも、50%の確率で200円を手に入れたいと思うだろうか?

多くの人が「200円を手に入れたい」と思うのではないでしょうか。しかし、実際に200円を手に入れられるかどうかはわかりません。一方、100円は確実に手に入ります。
人は、利益よりも損失をより大きく感じるという心理があります。これが、プロスペクト理論と呼ばれる行動経済学の理論で説明できる現象です。

従来の期待効用理論と異なるプロスペクト理論
従来の経済学では、期待効用理論と呼ばれる理論に基づいて、人間の意思決定を説明していました。期待効用理論では、人は期待される効用に基づいて意思決定を行うと仮定されています。
期待される効用とは、ある選択肢を選択したときに得られる利益と損失の期待値を、それぞれの確率と効用で重み付けしたものです。
例えば、上記のような2つの選択肢の場合、期待効用理論では以下のようになります。
• 選択肢1:100円を確実に手に入れる
o 期待される効用 = 100円 × 1 (確実) = 100円
• 選択肢2:50%の確率で200円を手に入れる
o 期待される効用 = 200円 × 0.5 (50%) + 0円 × 0.5 (50%) = 100円
つまり、期待効用理論では、2つの選択肢の期待される効用は同じ100円となります。しかし、実際には多くの人が選択肢1を選ぶでしょう。
これが、プロスペクト理論によって説明できる現象です。

損失回避と期待効用関数の謎
プロスペクト理論では、人は損失を利益よりも2倍以上大きく感じるという損失回避の性質を持っていると仮定されています。
そのため、上記のような2つの選択肢の場合、期待効用理論では同じ100円でも、プロスペクト理論では選択肢1の方が効用が大きくなるため、多くの人が選択肢1を選ぶことになります。
さらに、プロスペクト理論では、参照点と呼ばれる過去の経験や現在の状況を基準として判断する傾向があることも示されています。
例えば、過去に投資で損失をした経験がある人は、新しい投資に対してより慎重になる傾向があります。
また、確率加重と呼ばれる確率を過小評価したり過大評価したりする傾向も示されています。
例えば、宝くじを買う人は、当選確率が低いことをわかっていても、高額当選の可能性に大きく心を惹かれてしまいます。

事例
損失回避
• 確実な小さな利益よりも、不確実な大きな利益を追求する傾向
o 例:バーゲンで値下げされた服をたくさん買う
o 例:宝くじを買う
• 損失を回避するために、リスクを冒してしまう
o 例:病気のリスクを恐れて、定期検診を受けない
o 例:新しいことに挑戦することを避ける

参照点
• 過去の経験や現在の状況によって、判断がゆがんでしまう
o 例:過去に高い買い物をしてしまった経験があると、その後は節約しすぎてしまう
o 例:周りの人々が贅沢な生活をしていると、自分もそれに倣ってしまう

確率加重
• 低い確率の出来事を過大評価したり、高い確率の出来事を過小評価したりする
o 例:宝くじの当選確率が低いことをわかっていても、つい買ってしまう
o 例:飛行機事故のリスクが低いことをわかっていても、飛行機に乗るのが怖い

対策
• 損失を小さく、利益を大きく考える
o 例:1回の買い物で高額なものを買うよりも、複数回に分けて小さな買い物をする
o 例:投資する場合は、分散投資をしてリスクを軽減する
• 複数の選択肢を比較検討する
o 例:複数の商品を比較して、一番お得なものを選ぶ
o 例:複数の投資先を比較して、自分に合ったものを選ぶ
• 確率を客観的に評価する
o 例:宝くじを買う前に、当選確率をよく考える
o 例:飛行機に乗る前に、飛行機事故の統計データを見る

まとめ
プロスペクト理論は、人間の心理を理解することで、より良い意思決定を行うためのヒントを与えてくれます。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す